相続で印鑑証明が必要な場合
1 相続で印鑑証明が必要な理由
市役所・区役所で印鑑登録証明をした印鑑を、一般的に「実印」といい、重要な手続では実印を使うことが多いです。
この「実印」という言葉は、実は法律用語ではなく、法的には普通の印鑑も実印にも違いはなく、「実印でなければならない」といった法律はありません。
では、なぜ、実印が相続手続で必要かというと、金融機関や法務局などで行う一部の手続は実印でなければならないという内部的なルールがあるからです。
なお、相続手続で使う実印は、全て相続人の実印です。
亡くなった方の実印を使うことはありません。
そのため、亡くなった方の実印が見つからなくても問題はないので安心してください。
2 印鑑証明が必要な手続
具体的に実印が必要な手続は次のようなものがあります。
⑴ 土地・建物の名義変更
亡くなった方の不動産の名義を変える場合、誰が不動産を相続するかを決めて法務局に申告する必要があります。
一般的には、遺産分割協議書を作り相続人全員が判子を押しますが、この遺産分割協議書には実印で捺印し、印鑑登録証明書の原本と一緒に法務局に提出しなければなりません。
相続分譲渡証書などを提出する場合も同様です。
⑵ 銀行での預金解約・名義変更
銀行などの金融機関での相続手続は、基本的に全ての判子は実印でなければなりません。
遺産分割協議書、相続手続依頼書、相続届など、金融機関ごとに提出する書類は異なりますが、実印を押して印鑑登録証明書の原本とセットで提出することになります
(印鑑登録証明書は1通出せば大丈夫です)。
⑶ 生命保険の請求手続
生命保険を請求するときに保険会社に提出する書類には、実印での捺印を要求されることが多いです。
保険会社には、実印を押した書類と印鑑登録証明書を送ることになりますが、この印鑑登録証明書はコピーで大丈夫な場合があります。
3 印鑑証明が必要ない場合
印鑑登録証明書が必要な理由は、一部の手続が実印じゃないと受け付けられないからで、法律が理由ではありません。
そのため、上に挙げた一部の手続で使う書類などを除けば、必ずしも実印と印鑑証明書は不要です。
例えば、弁護士に依頼する際に裁判所に提出する委任状等に実印を押す必要はありません。
ただし、銀行・法務局・保険会社に提出する委任状は、実印でなければなりません。
4 印鑑証明の期限
印鑑登録証明書にも期限はあります。
印鑑証明の期限は一般的には6か月です。
たとえば、令和3年3月22日に取得した印鑑登録証明書は、令和3年9月22日までに銀行に提出する必要があります。
(提出さえすれば、手続が9月22日までに終わらなくても大丈夫です。)
ただし、法務局(=不動産の名義変更)だけは、印鑑登録証明書に期限はありません。